税理士試験は「院免除」、つまり大学院修了による科目免除が認められている試験です。

この院免除をめぐっては大学院の費用がかかることから「お金持ちのための優遇措置」といった批判がされることも多いですね。

一方で、院免除は「試験勉強は得意でないけれど仕事はできる」というタイプの人にとっては税理士試験受験の負担を大幅に軽減してくれるツールとなっている側面もあります。

今回は、税理士試験の院免除について、私が税理士事務所業界で見聞きした体験談などを紹介させていただきます。

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税理士試験の院免除は「金持ちの優遇措置」?

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自力で試験受験をしている人たちからは評判の悪い院免除ですが、実際には非常に多くの人が院免除によって税理士資格を取得しています。

特に多いのが2代目、3代目として税理士事務所を親から引き継がないといけない人が院免除で税理士資格を取得するケースですね。

(普通にサラリーマンとして税理士事務所勤務の人もいますが)

税理士業界というのはなぜか国会議員並みに世襲の世界です。

税理士事務所のホームページなどで所長税理士のプロフィールなんかを見ていると「親も税理士で…」という人がものすごく多いのに気が付かれると思います。

税理士業界のルールを決めているエライ人たちにとって、税理士試験の院免除のシステムは自分の税理士事務所を長持ちさせるためにもとても都合が良いという側面はあると思います。

税理士に院免除でなると損?

実際に税理士試験を院免除でパスした人(2代目組ではなく、サラリーマン組の人)に話をうかがうと、「結局はお金ばっかりかかって損した部分もあるんだよね…」という人は結構多いです。

ただ、実際に受験専念した場合との費用を詳細に比較してみると、実は院免除の方が費用が安かったりもします(具体的な金額比較は後述)

税理士試験院免による科目免除のルール

この記事を読んでいる方には不必要かもしれませんが、念のため大学院修了による科目免除のルールについて整理しておきましょう。

税理士試験は会計科目2科目+税法科目3科目=合計5科目の合格が必要な試験です。

大学院を終了すると、会計科目か税法科目のどちらかを選んで免除を受けることが可能になります。

その際、いずれの科目群の免除を受けるとしても、最低限1科目は自力試験で合格しておかなくてはならないというのがルールです。

なので、院免除を受けた場合に自力での合格が何科目必要か?については以下のようになります。

院免除を前提にした場合、自力合格は何科目必要?

  • ①会計科目の院免除を選んだ場合

会計科目1科目+税法科目3科目=合計4科目の自力合格が必要

  • ②税法科目の院免除を選んだ場合

会計科目2科目+税法科目1科目=合計3科目の自力合格が必要

なお、大学院に2回行くというウルトラCもありますが、その場合にも「会計科目1科目+税法科目1科目」のトータル2科目の自力合格が必要ということになります。

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税理士試験は院免除と受験専念のどちらを選択すべきか?

私は基本的に受験専念というのはあまりおすすめしません。

というのも、税理士試験受験生で「3年以上受験専念してましたが、結局科目合格どまりでした」という人を山ほど見てきたからです。

3年以上の受験専念期間を費やしたのにもかかわらず科目合格どまりというのは相当につらいものがあります。

要因は人それぞれあると思いますが、受験専念期間=ニートですから、仕事をしながら受験する場合と比較すると、どうしても時間管理が甘くなるというのがあるのかもしれませんね。

税理士試験は特に税法科目で暗記が非常に重要な試験ですから、勉強時間を長く確保するというよりも、いかに効率よく継続するかが重要な試験といえます。

この点でも、うまくペースをつかめば仕事をしながらの合格が適しているという側面もあるのかもしれませんね(私のまわりでは受験専念で5科目合格した人より、仕事をしながら5科目合格、あるいは仕事をしながら院免除を使って合格という人が多いです)

院免除と受験専念の経済的負担の比較

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そう考えると、仕事をしながら「簿財+税法1科目」の合計3科目ぐらいを気合でとって、そのあとにさらに仕事をしながら大学院に通って院免除を受けるというルートの方がキャリアの断絶もなく効率的な気がします。

受験専念を選択した場合は無収入になりますから、年間200万円ぐらいは生活費分が純損失として出ていくことになります(アルバイトするよ!という人もいるかもしれませんが、それは「受験専念」の定義から外れるかと思います)

単純に出ていく費用の面でこの2つのルートを比較すると以下のようになりますが、出ていくお金のことだけを考えると、実は院免除の方がお得であることがご理解いただけるかと思います。

なお、比較期間は4年間とし、

  • 受験専念コースは2年間+その後税理士事務所に2年間勤務でトータル4年間
  • 院免除コースは3科目取得に2年間+大学院卒業に2年間(その間ずっと税理士事務所勤務)でトータル4年間

と仮定しましょう

  • ①受験専念コースの4年間の費用:トータル200万円のマイナス

(受験専念期間中の収入0円×2年間+合格後の収入350万円×2年間)-(専門学校費用100万円+生活費年間200万円×4年間)=200万円

  • ②院免除コースの4年間の費用(3科目を自力取得):トータル140万円のプラス

(収入300万円×4年間)+(3科目分の専門学校費用60万円+大学院学費2年間で200万円+生活費200万円×4年間)=140万円

※無資格の場合、税理士事務所での年収手取り300万円とします。
※資格取得後は多少良くて年収手取り350万円としています。

やはり、受験専念の場合は2年間の無収入というのが非常に大きいですね。

家族のサポートを受けられる人はいいですが、20代後半以降の男性だと普通そうではないでしょう。

サポートなしの場合、貯金を食いつぶしながら生活することになりますが、受験に合格するかどうかは受験に専念している時点では不確定要素ですから、かなりの精神的負担になることが予想されます。

あと、受験専念期間中はキャリアが断絶してしまうというのもつらいですね。

2年間の無職ブランク期間というのは社会人としては非常に大きいと考えておく必要があるでしょう(この業界ではそういう人もけっこう普通にいますが…)

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税理士試験の専門学校の費用について

ちなみに専門学校の費用は、簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法は1科目20万円程度、その他の税法科目は15万円程度が相場です。

仮に簿記論・財務諸表論・法人税法・消費税法・事業税の5科目を選択したとすると、トータルでかかる費用は20万円×3科目+15万円×2科目=約100万円(模試や参考書、勉強場所代などの費用も入れて)になります。

なお、税理士試験の独学は天才でない限り不可能ですので、選択肢に入れないように注意してください。

税理士に院免除でなると実務能力を疑われることはある?

実際に税理士事務所に採用される段になって、「この人は税理士試験合格者といえども院免除か」と実務能力を疑われてしまうのでは…と不安に感じる方もおられるかもしれません。

税理士業界は完全に実力主義の世界です(高卒で稼ぐ税理士になっている人もたくさんいます)

なので、大卒から実務経験なしで院免除→税理士合格というルートで社会に出る人にとっては最初の就職ではちょっと苦労する面はあるかもしれません。

ただ、実務経験を積んでからの転職活動ではどういう仕事の実績をあげてきたか?(年間何件の顧問件数をさばいてきたかとか、新規の顧問先紹介をたくさんとってきたとか、相続税申告年間~件やってました、とか)が決定的に重要です。

ちゃんと実務での実績がある人であれば転職活動で院免除での税理士取得が不利になるということは少ないでしょう。

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税理士試験の院免除は今後廃止される?

税理士試験の院免除は「いつか廃止されるのでは…」ということがかなり昔からいわれていますが、あいかわらず健在です。

平成13年年改正で「全科目免除」がなくなって「一部科目免除」になったことも業界関係者の不安を大いにあおりましたが、一部科目免除のルールになってからはこのままいきそうな感じですね。

税理士試験のルールを決めているのは税理士業界のエライ税理士の方々(が応援している国会議員)ですから、自分の子供に自分の事務所を継がせるという必要性がある以上、大学院卒業による科目免除の廃止というのはちょっと考えにくいですね。

(司法試験も法科大学院重視になりましたし)

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科目免除可能な大学院に入るのは難しい?

別問題として、科目免除を受けられる大学院に入るのが可能か?という問題もありますね。

税法科目の免除を受ける場合には法律系の大学院、会計科目の免除を受ける場合には経済学系や商学系の大学院に進む必要があります。

結論から言うと、有名大学にこだわらないのであれば、大学院入試はそれほどハードルは高くないでしょう。

関東関西、都市部地方問わず定員割れをおこしている大学院は一定数ありますから、そういうところを選べば大学院入試の受験勉強期間を設けることなく院免除コースに乗ることは可能です。

試験科目は一般入試の場合は税法や会計学などの科目から1~2科目選択して受験、社会人入試の場合は「小論文+口頭試問」という大学院が多いようです。

必ずしも英語は必要ないので勉強のブランクがある人も特に問題はないかと思います。

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税理士試験の科目免除:国家公務員か地方公務員の経験がある場合

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税理士試験は会計科目2科目、税法科目3科目(合計5科目)の合格が必要な試験ですが、様々な方法で科目免除が認められるのも特徴です。

科目免除を受ける方法は大きく分けて①大学院に行く方法と、②公務員として実務経験を積む方法の2つがあります。

今回は、②の公務員として実務経験を積んで税理士試験の科目免除を受ける際の条件について解説させていただきます。

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税理士試験の免除:公務員の場合

公務員経験によって税理士試験の免除を受けられるケースとしては大きく分けて次の3つのケースが考えられます(税理士試験科目免除の要件は、税理士法という法律の7条~8条でルールが決まっています)

税理士試験免除の条件:公務員としての実務経験による免除

  • ①国税科目を免除してもらえるケース
  • ②地方税科目を免除してもらえるケース
  • ③全科目を免除してもらえるケース

以下、順番に解説させていただきます。

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①国税科目を免除してもらえるケース

国家公務員として10年以上、または15年以上(後で説明する職業区分によって必要年数が違います)の経験がある人は、税理士試験の国税科目の免除を受けることができます。

ここでいう「国税科目」というのは、簡単に言えば「税法科目3科目すべての免除」という意味です。

税法科目のうち、所得税法・法人税法・相続税法は国が課税主体となっている「国税」だからです。

この場合免除されるのは税法科目3科目だけですから、会計科目2科目(簿記論・財務諸表論)については自力で勉強して合格する必要があります。

国家公務員の10年と15年の区別について

国家公務員の場合、いいまわしがやや難しくなりますが、「国税の賦課または立法に関する事務」10年以上の経験で国税科目の免除(つまり税法3科目すべての免除)を受けることが可能になります。

一方で、「それ以外の国税の事務」の経験がある人の場合は、通算15年以上の経験で国税科目の免除(税法3科目の免除)が受けられます。

前者は具体的には国税調査官(いわゆるマルサ)のことですね。

国税調査官以外の税務署職員としての経験がある人は後者に該当することになるでしょう。

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②地方税科目を免除してもらえるケース

地方税科目を免除してもらえるのは、地方公務員としての経験年数(後で説明させていただく区分に従って10年または15年以上)が一定以上ある人の場合です。

地方公務員の場合、免除されるのはあくまでも地方税科目2科目だけです。

なので、選択必須となる所得税と法人税のどちらか1科目と、会計科目(簿記論と財務諸表論)は自力で勉強して合格しなくてはなりません。

これらは税理士試験の中でももっともボリュームの多い試験科目ですから、やや負担は軽くなるとはいえ、一定期間は本腰を入れて試験勉強をする必要があるでしょう。

地方公務員の10年と15年の区別について

ごく簡単にいうと、課税関連のより専門性の高い実務経験がある人は10年でOK、やや専門性の下がる業務の経験がある方は15年が必要、ということになるかと思います。

具体的には、住民税や固定資産税といった地方税に関する課税事務を10年以上経験した場合には、地方税科目を免除してもらえます。

一方で、地方公務員としてやや業務レベルの下がる徴収事務を15年以上経験した場合にも同様に地方税科目の免除を受けられます。

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③税理士試験全科目を免除してもらえるケース

最後に税理士試験5科目すべてを免除してもらえるケースについてですが、これは国税職員として23年間の経験がある場合が該当します。

「元税務署職員の税理士」として売り出している税理士の多くがこのルートで開業税理士となっていますね。

法律上は指定研修の受講が必要となっていますが、実質的には無試験で税理士試験5科目すべての合格の扱いをしてもらえることになります。

公務員要件での免除はあくまでも特典

このように書くと身もふたもないかもしれませんが、最初から将来的に税理士となることを目指して公務員になる…という人は普通いません(国税職員はそれ自体が社会的な意義もステータスもある仕事です)

あくまでも公務員としてやりたいことがあって国税専門官などになり、老後の特典というか現役リタイア後のおまけのようなかたちで税理士資格をあげますよという雰囲気ですね。

これから税理士業界で働くことを目指す若い方は、公務員としての科目免除を期待するよりも、税理士事務所で仕事をしながら地道に科目合格を積み重ねていくのが近道です。

あるいは、会計科目2科目と税法科目1科目に仕事をしながら合格して、残りの税法2科目は大学院修了で免除してもらうというのが現実的なルートといえるでしょう。

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