
(監査法人から税理士法人に転職ってどう?公認会計士の転職体験談を紹介)
公認会計士を持つ人の多くが監査法人勤務を選択すると思いますが、
中には税理士法人(税理士事務所)で働くことを選ぶ人もいます。
このキャリアを選ぶ人の多くは、
将来的な独立を視野に入れている人が多いですね。

監査法人勤務の高い給料や福利厚生は魅力ですが、
独立して自分の事務所を持つのも魅力的です。
何よりも自由な働き方を手に入れられますし、
収入もがんばり次第で青天井にできます。
ただし、会計士と税理士は顧客層・仕事内容がかなり違いますので、
税理士として独立するために、
3〜10年程度は税理士事務所(税理士法人)で修業する人が多いですね。
今回は、監査法人から税理士法人への転職を経験した公認会計士有資格者の方に、
転職体験談を投稿していただきました。
参考にしてみてください。
この記事の目次
【監査法人から税理士法人へ転職】公認会計士の転職体験談

(監査法人から税理士法事に転職って実際どう?)
私は、監査法人から税理士法人への転職を経験しました。

↓職歴をまとめるとこんな感じです。
- 学生時代に会計士試験合格
- 会計事務所に入社
- スタッフ500人規模の準大手監査法人に転職(6年勤務)
- 独立を目指して税理士法人に転職
大学に通いながら会計士の勉強をし、3年かけて会計士試験に合格しました。
卒業後に会計事務所に入所して基本的な会計実務を身につけた後、
監査経験を積むためにスタッフ500人規模の準大手監査法人に就職しました。
監査では法定監査とIPO監査を担当し、
海外メンバーファームからのリファード業務もこなしていました。
(主査経験は4社ほどあります)
その後、さらに監査法人から税理士法人へ転職しました。
私が監査法人から税理士法人に転職した理由は、
増え続ける監査手続に限界を感じていたことと、
独立に向けてスキルアップをしたかったからです。
正直、一時的に年収が下がるなどのデメリットはありましたが、
今は将来の独立に向けて頑張っている感じですね。

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監査法人勤務6年目の公認会計士が税理士法人に転職した理由
監査人であればご理解いただけると思うのですが、
不正が起こる度に作業が増えていきます。
役員報酬の監査や減損会計の見積の監査等がそれにあたりますね。
またKAMや新収益認識基準の導入など、
監査の負担となる新しい制度もどんどんと増えていったのを記憶しております。
毎年増え続ける監査手続と、それを「効率化してなんとかして」、というだけの上司の指示に嫌気がさしていました。
元々独立志望ではあったのですが、
激務になる一方の仕事に一度メンタルダウンしてしまい、仕事を休職することに。
その休職期間に自分が本当にやりたいことを見つめなおし、
「やはり独立をしよう、そのためにまずはスキルアップをしよう」
と思ったのが税理士法人に転職するきっかけになりました。
監査の実務要件を満たすために監査法人に入所いたしましたが、
仕事をしていくうちによりお客様に直接お役にたてる業務をしたいと感じておりました。
また、会計士の独立にはやはり税務が必要と思い、税理士法人への転職を決意しました。
監査法人で実務経験のある公認会計士が税理士法人に転職するメリット

(監査法人から税理士法人に転職するメリット)
1. 税務やM&Aといった、幅広いスキルを磨ける
税理士法人によるのですが、特に中小規模の法人は、
税務とM&Aの業務がわかれておらず、両方の経験を積むことができます。
↓具体的なスキルとしては以下のようなスキルが身につくでしょう。
- 税務指導
- 申告書作成
- 土地評価
- 相続税評価
- 組織再編税制
- デューデリジェンス
- 会社価値評価
- 制度導入支援
ただし、税理士事務所の中にはごく小さな規模でやっているところもあります。
そういう規模の事務所は、
当然ながら顧問先クライアントの規模も小さくなります。
例えば商店街のお店とか、町工場の社長さんとかですね。
こういった顧問先から依頼される仕事は、どうしてもごく基本的な税務申告などに限られます。
会計士としての経験を活かして仕事をしたいのであれば、
できればBIG4税理士法人や国内の大手事務所などを目指すのが良いでしょう。
資産税や国際税務といった「専門分野」を持った事務所もおすすめです。
税理士法人で経験した実務(直近で面白かったもの)
例えば直近で面白かった業務は、新収益認識基準の導入業務です。
売上規模が数十億円のメーカー直販を運営する会社であり、
会社法監査を受けているところです。
監査法人から新収益認識基準の導入が必要と言われたらしく、
その導入のために弊法人に依頼がきました。
一番最近まで監査法人に勤めていたのが私だったため、
新収益認識基準には一番詳しいだろうということで主任に抜擢されました。
とはいえ丸投げではなく、チームを組んで先輩方と協力しながら業務をするというスタンスです。
依頼会社の収益形態を把握し、収益基準にあてはめながら実際の業務に適用していくという経験は監査法人では積めなかったです。
この業務は、新収益認識基準を理解し実務に活かす上で大変勉強になるものです。
依頼会社の経理担当の方が1名だったため、
その方と会社経理についてヒアリングをしながら基準導入のための提案を続けているところです。
先輩方はBIG4に所属していた会計士たちであり、非常に仕事のできる方々であったため、安心して業務に臨むことができています。
私の所属する部署は会計士のみで構成されており、皆さん優秀な方たちです。
所長も会計士で、かつとても行動力のある人です。
そのため、事務所が常に活気がある状態に保たれているように感じます。
2. 税理士法人では監査法人よりもお客様によりそって働ける
税理士法人では、税務のアドバイスを多くするため、
お客様により直接的な価値提供ができている、と感じられるところが税理士法人の魅力です。
顧客層としては、監査が主に上場企業やIPOを目指す企業のみだったのに対し、色々な規模の企業様や、個人の確定申告にも関わる等、かなり幅広い層と仕事をすることになります。
税務の申告タイミングではかなり忙しくなるものの、
それ以外では残業するほどの忙しさではないイメージです。
(あくまで中規模法人の場合で、大規模法人だともっと忙しいと耳にします。)
お客様と日常的にコミュニケーションをとっていく必要があるため、クライアント志向が高い人には向いている仕事でしょう。
例えば広告分析の会社様の担当になりました。
社長は30代の若い方で、自身の把握している広告事業について月次のミーティングごとにたくさんのことを教えていただいております。
また、個人で資産をもっているお客様の担当もしております。
総合商社に勤めている個人の資産家のお客様がいらっしゃいます。
節税策について関心の強い方で、節税や会計制度について度々質問の電話がかかってきます。
それにご対応し、ありがとうと言われると仕事のやりがいを感じます。
3. 独立のためのスキルが身に着く
会計士であれば、独立を考えている人も一定数いると思われます。
独立には税務業務の知識が必要ですし、
より稼げるようになるためには、M&Aの知識もあった方がいいです。
組織再編税制や相続税の価値評価といった、実務経験が無いと実施するのが難しい業務について身につけておくと独立に役立ちます。
M&A業務も同様です。
したがって、税理士法人への転職は独立志向の人にも向いています。
監査法人から税理士法人に転職して感じたデメリット

(監査法人から税理士法人に転職するデメリット)
1. 年収が一時的に下がる可能性あり
監査法人で私と同じように6年ほど働いている人であれば、
年収は残業代込で700万以上といった方も多いのではないでしょうか。
税理士法人に転職する場合、税務業務は未経験のため、どうしても年収が下がります。
↓初任給は500万程と考えるといいでしょう。
昇給額は法人の規模によって変わります。
大手税理士法人で経験を積めば、年収1,000万も狙えるでしょう。
一方で、中小規模法人だと年収800万ほどが上限になってきます。
また、私が勤めていた税理士法人ですと、プラスで取った資格で給料が増加する仕組みでした。
例えばファイナンシャルプランナーや中小企業診断士といった資格を取得すれば給料がアップします。
ファイナンシャルプランナー2級で2万、中小企業診断士で5万程アップすると記憶しております。
また、課のリーダーになると、これまた5万程給料があがります。
加えて新規顧客を開拓し売上に貢献した場合、売上の数パーセントが特別手当として支給されるルールがありました。
転職候補の税理士法人がこういった制度を採用しているか、確認をとるのがいいでしょう。
2. 監査法人経験は税理士法人では必ずしも評価されない
先ほども述べましたが、監査法人勤めの会計士は税務の経験がないため、初年度では新人扱いです。
税理士事務所によっては、採用条件に税務経験〇年以上必須、となっているところも多くあります。
そのため、監査法人での経験が、必ずしもそのまま税理士法人で評価されるとは限りません。
私は30歳を過ぎてから税理士法人への転職を始めたため、税務未経験ということで、何社も落とされる経験をしました。
何にせよ、会計士であれば税理士法人への転職は楽勝!と思わない方がいいです。
しかし、公認会計士が会計のプロフェッショナルとして重宝されることは事実なので、あきらめずに転職活動を続けていれば、自分の希望とあった税理士法人が見つかります。
3. お客様と緊密なコミュニケーションが必要
税理士法人では様々なお客様がおり、そうした方々の税務・会計相談に日常的にのることが多いです。
そのため、監査法人時代に比べてお客様との距離感が近く、よりコミュニケーションが必要になってきます。
ただ。監査法人でお客様対応をしている会計士は多いですから、お客様とのコミュニケーション能力は磨かれていることかと思います。
培った能力を応用すれば、この点はクリアできると思います。