- 大学院にいって税理士試験の科目免除を受けるってどう?
- 会計事務所への転職で不利になるって本当?
- 勉強では受からなかった人というレッテルを貼られたりしない?
↑税理士試験の受験生の方の中には、こうした疑問や不安をお持ちの方も多いでしょう。
理想はもちろん試験合格で5科目合格ですよね。
しかし、税理士試験というのは理論の丸暗記と計算問題を解くテクニックが問われる試験です。
(この理論の丸暗記はたとえ話ではなく、テキスト数冊を一字一句間違えず、お坊さんのお経のように覚えることが求められます)
当然ながら、税理士試験との相性が良くない人というのはいます。
どんなに頭が良い人でも合格できない可能性があります。
そうした人がオプションとして検討すべきなのが、
大学院終了によって税理士試験の科目免除を受ける方法です。
税法科目の免除を利用すれば、税法は1科目だけ合格できればOKになりますので、
苦手科目がある人も比較的短期間で税理士になれる可能性が高いですよ。
この記事では、大学院修了による税理士試験科目免除について解説します。
科目免除で税理士登録した人は、会計事務所への転職時にどのような評価を受けるものなのか?についても説明していますので、参考にしてみてください。
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この記事の目次
大学院修了による科目免除で税理士になる2パターン
この記事をお読みのあなたはすでにご存知かもしれませんが、
↓以下の条件を満たせば、2年間の大学院の修士課程修了で税理士になることができます。
(ちなみに圧倒的に多いパターンは1.だと思います)
大学院に2回行く(ダブルマスター)という方法もありますが、
かかる時間やその後の実務での評価のされ方を考えるとあまり現実的ではないので省きます。
(家業を絶対に継がないといけない2代目3代目税理士さんでごくまれに見かけますが…)
大学院修了による税理士試験科目免除のルール(院免)
大学院修了による科目免除のルールについて整理しておきましょう。
税理士試験は会計科目2科目+税法科目3科目=合計5科目の合格が必要な試験ですが、
大学院を修了するときにどのような修士論文を書いたか?によって、
会計科目か税法科目のどちらかを選んで免除を受けることできます。
会計科目の免除を選択する場合、科目免除を受けられるのは1科目だけです。
税法科目の免除を受ける場合には、2科目の免除が可能になります。
↓なので、院免除を受けた場合に自力での合格が何科目必要か?についてまとめると以下のようになります。
- 会計科目の免除を選んだ場合
会計科目1科目+税法科目3科目=合計4科目の自力合格が必要 - 税法科目の免除を選んだ場合
会計科目2科目+税法科目1科目=合計3科目の自力合格が必要
なお、大学院に2回行くというウルトラCもありますが、
その場合にも「会計科目1科目+税法科目1科目」のトータル2科目の自力合格が必要です。
試験科目が1個増えるのは大幅な労力カットになります。
しかも税法免除については法人税や所得税といったボリュームの大きい科目についても適用してもらうことが可能ですから、
実際には税法科目免除を選択する人がほとんどです。
社会人が大学院に行くのは時間の無駄?
実際に税理士試験を院免除でパスした人に話をうかがうと、
結局はお金ばっかりかかって損した部分もあるんだよね…という人は結構多いです。
ただ、実際に受験専念した場合との費用を詳細に比較してみると、実は院免除の方が費用が安かったりもします。
私大の大学院の年間学費は2年トータルで200万円ぐらいです。
(1年目は100万円〜120万円、2年目は60万円〜80万円ぐらいです)
月額8万円を2年間かけてはらうというイメージでしょうか。
このぐらいの金額の支出で税理士になれるなら、それほど大きな損失ではないかもしれませんね。
車をローンで買うぐらいなら、こっちの方がよほど有意義な投資になるでしょう。
大学院修了による科目免除で税理士になると馬鹿にされる?
院免除で税理士になると「あの人は勉強ができなかった人」というレッテルを貼られるかも…
という不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、結論から言うとこれはまったく気にする必要はないと思います。
税理士として仕事をしていく上で「院免除で試験に通ったか、全科目受験で通ったか」が問われる場面というのはちょっとイメージできません。
気になるとしたら転職活動時の履歴書ぐらいだと思いますが、
採用を行う会計事務所側としては「仕事がちゃんとできる人ならOK」というのが基本スタンスです。
そもそも税理士試験に受かっていない人でも、
仕事ができてたくさん給料を稼いでいる会計事務所職員って山ほどいますからね。
税理士に院免除でなると実務能力を疑われることはある?
実際に会計事務所に採用される段になって、
「この人は税理士試験合格者といえども院免除か」と実務能力を疑われてしまうのでは…と不安に感じる方もおられるかもしれません。
税理士業界は完全に実力主義の世界です(高卒で稼ぐ税理士になっている人もたくさんいます)
なので、大卒から実務経験なしで院免除→税理士合格というルートで社会に出る人にとっては最初の就職ではちょっと苦労する面はあるかもしれません。
ただ、実務経験を積んでからの転職活動ではどういう仕事の実績をあげてきたか?が決定的に重要です。
(年間何件の顧問件数をさばいてきたかとか、新規の顧問先紹介をたくさんとってきたとか、相続税申告年間~件やってました、とか)
ちゃんと実務での実績がある人であれば転職活動で院免除での税理士取得が不利になるということは少ないでしょう。
仕事が忙しすぎて、夜間の大学院に通うことすら難しい…という人へ
現在すでに科目合格があり「大学院に通いさえすれば税理士になれる」という状態の人であれば、
院免除という道を選択するのが近道だと思います。
ただ、夜間の大学院に通うと行っても「仕事が忙しくてそれすらも難しい…」という人もおられるかもしれません。
「お給料を受け取っている以上、仕事を最優先でやるのが社会人としての責任だ」と考える人もいらっしゃるでしょう。
その考えは私は否定しませんが、やはり自分の人生は自分で切り開くべきだと私は思います。
勤務先にとって、あなたはあくまでも「いち従業員」にすぎませんし、
あなたの人生にまで責任を取ってくれるわけではありませんからね。
そもそも、従業員が夜間の大学院に通うことすら認めていない拘束が強い事務所というのは、
客観的に見てブラック事務所である可能性が高いです。
あなたが現在、そうしたブラックな環境にいるのであれば、
別の事務所に転職することも選択肢として考える必要性があるかもしれませんよ。
↓ブラックな会計事務所の見分け方や特徴についてはこちらもご覧ください。
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税理士試験の院免除は「金持ちの優遇措置」?
税理士試験の科目免除をめぐっては、
大学院の費用がかかることから「お金持ちのための優遇措置」といった批判がされることも多いですね。
ただ、これは逆にいいえば
「試験勉強は得意でないけれど仕事はできる」というタイプの人にとって、
税理士試験受験の負担を大幅に軽減してくれるツールとなっている側面もあります。
自力で試験受験をしている人たちからは評判の悪い院免除ですが、
実際には非常に多くの人が院免除によって税理士資格を取得しています。
特に多いのが2代目、3代目として会計事務所を親から引き継がないといけない人が院免除で税理士資格を取得するケースですね。
税理士業界というのはなぜか国会議員並みに世襲の世界です。
会計事務所のホームページなどで
所長税理士のプロフィールなんかを見ていると
「うちは親も税理士で…」という人がものすごく多いのに気が付かれると思います。
税理士業界のルールを決めているエライ人たちにとって、
税理士試験の院免除のシステムは自分の会計事務所を長持ちさせるためにもとても都合が良いという側面はあるかもしれませんね。
税理士試験は院免除と受験専念のどちらを選択すべきか?
私は基本的に受験専念というのはあまりおすすめしません。
というのも、税理士試験受験生で「3年以上受験専念してましたが、結局科目合格どまりでした」という人を山ほど見てきたからです。
人それぞれ事情があると思いますが、
客観的に見て「受験専念期間=ニート」です。
(転職市場ではそのように評価されます)
社会人が受験専念期間をつくると、もしうまく合格までいけなかった場合に、
キャリア的に受けるダメージが大きすぎます。
勉強専念が許されるのは、どんなに遅くとも社会人3年目ぐらい(26歳〜28歳ぐらい)まででしょう。
院免除と受験専念の経済的負担の比較
そう考えると、すでに社会人担っている人にとっては、
↓以下のルートの方がキャリアの断絶もなく効率的です。
- 仕事をしながら「簿財+税法1科目」の合計3科目を気合でとってしまい、
- そのあとにさらに仕事をしながら大学院に通って院免除を受ける。
受験専念を選択した場合は無収入になりますから、
年間200万円ぐらいは生活費分が純損失として出ていくことになります。
(アルバイトするよ!という人もいるかもしれませんが、それは「受験専念」の定義から外れるかと思います)
単純に出ていく費用の面でこの2つのルートを比較すると以下のようになりますが、
出ていくお金のことだけを考えると、実は院免除の方がお得だったりしますね。
たとえば、比較期間は4年間とし、
- 受験専念コースは2年間+その後会計事務所に2年間勤務でトータル4年間
- 院免除コースは3科目取得に2年間+大学院卒業に2年間(その間ずっと会計事務所勤務)でトータル4年間
↓と仮定すると、トータルでかかる費用は以下のようになります。
- 受験専念コースの4年間の費用
トータル200万円のマイナス
(受験専念期間中の収入0円×2年間+合格後の収入350万円×2年間)-(専門学校費用100万円+生活費年間200万円×4年間)=▲200万円 - 院免除コースの4年間の費用(3科目を自力取得)
トータル140万円のプラス(収入300万円×4年間)+(3科目分の専門学校費用60万円+大学院学費2年間で200万円+生活費200万円×4年間)=140万円
※無資格の場合、会計事務所での年収手取り300万円とします。
※資格取得後は多少良くて年収手取り350万円としています。
やはり、受験専念の場合は2年間の無収入というのが非常に大きいですね。
家族のサポートを受けられる人はいいですが、20代後半以降の男性だと普通そうではないでしょう。
サポートなしの場合、貯金を食いつぶしながら生活することになりますが、
受験に合格するかどうかは受験に専念している時点では不確定要素ですから、かなりの精神的負担になることが予想されます。
税理士試験の専門学校の費用について
ちなみに専門学校の費用は、簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法は1科目20万円程度、
その他の税法科目は15万円程度が相場です。
仮に簿記論・財務諸表論・法人税法・消費税法・事業税の5科目を選択したとすると、
トータルでかかる費用は20万円×3科目+15万円×2科目=約100万円(模試や参考書、勉強場所代などの費用も入れて)になります。
なお、税理士試験の独学は天才でない限り不可能ですので、選択肢に入れないように注意してください。
税理士試験の院免除は今後廃止される?
税理士試験の院免除は「いつか廃止されるのでは…」
ということがかなり昔からいわれていますが、あいかわらず健在です。
平成13年年改正で「全科目免除」がなくなって「一部科目免除」になったことも業界関係者の不安を大いにあおりました。
しかし、一部科目免除のルールになってからはこのままいきそうな感じですね。
税理士試験のルールを決めているのは税理士業界のエライ税理士の方々(が応援している国会議員)です。
なので、自分の子供に自分の事務所を継がせるという必要性がある以上、
大学院卒業による科目免除の廃止というのはちょっと考えにくいですね。
(司法試験や公認会計士試験も大学院重視になりましたし)
科目免除可能な大学院に入るのは難しい?
根本的な問題として、科目免除を受けられる大学院に入るのが可能か?という問題もありますね。
税法科目の免除を受ける場合には法律系の大学院、
会計科目の免除を受ける場合には経済学系や商学系の大学院に進む必要があります。
結論から言うと、有名大学にこだわらないのであれば、大学院入試はそれほどハードルは高くないでしょう。
関東関西、都市部地方問わず定員割れをおこしている大学院は一定数ありますから、
そういうところを選べば大学院入試の受験勉強期間を設けることなく院免除コースに乗ることは可能です。
試験科目は一般入試の場合は税法や会計学などの科目から1~2科目選択して受験、
社会人入試の場合は「小論文+口頭試問」という大学院が多いようです。
必ずしも英語は必要ないので勉強のブランクがある人も特に問題はないかと思います。
税理士試験の科目免除:国家公務員か地方公務員の経験がある場合
税理士試験は会計科目2科目、税法科目3科目(合計5科目)の合格が必要な試験ですが、
様々な方法で科目免除が認められるのも特徴です。
科目免除を受ける方法としては、
上で見てきたように1.大学院に行く方法と、2.公務員として実務要件を満たす方法の2つがあります。
以下では公務員として実務要件を満たす方法について理科敷いておきましょう。
税理士試験の免除:公務員の場合
公務員経験によって税理士試験の免除を受けられるケースとしては、
↓大きく分けて次の3つのケースが考えられます(税理士試験科目免除の要件は、税理士法7条~8条でルールが決まっています)
- 国税科目を免除してもらえるケース
- 地方税科目を免除してもらえるケース
- 全科目を免除してもらえるケース
以下、順番に見ていきましょう。
1.国税科目を免除してもらえるケース
国家公務員として10年以上、または15年以上(後で説明する職業区分によって必要年数が違います)の経験がある人は、
税理士試験の国税科目の免除を受けることができます。
ここでいう「国税科目」というのは、簡単に言えば「税法科目3科目すべての免除」という意味です。
税法科目のうち、所得税法・法人税法・相続税法は国が課税主体となっている「国税」だからです。
この場合免除されるのは税法科目3科目だけですから、
会計科目2科目(簿記論・財務諸表論)については自力で勉強して合格する必要があります。
国家公務員の10年と15年の区別について
国家公務員の場合、「国税の賦課または立法に関する事務」10年以上の経験で国税科目の免除(つまり税法3科目すべての免除)を受けることが可能になります。
(いいまわしがやや難しくなりすみません)
一方で、「それ以外の国税の事務」の経験がある人の場合は、
通算15年以上の経験で国税科目の免除(税法3科目の免除)が受けられます。
前者は具体的には国税調査官(いわゆるマルサ)のことですね。
国税調査官以外の税務署職員としての経験がある人は後者に該当することになるでしょう。
2.地方税科目を免除してもらえるケース
地方税科目を免除してもらえるのは、
地方公務員としての経験年数が10年または15年以上ある人です。
(必要年数は職務内容によって違います:後述)
地方公務員の場合、免除されるのはあくまでも地方税科目2科目だけです。
なので、選択必須となる所得税と法人税のどちらか1科目と、
会計科目(簿記論と財務諸表論)は自力で勉強して合格しなくてはなりません。
これらは税理士試験の中でももっともボリュームの多い試験科目ですから、一定期間は本腰を入れて試験勉強をする必要があるでしょう。
地方公務員の10年と15年の区別について
↓これについては、ごく簡単にいうと以下のようになります。
- 実務経験10年でOKの人
課税関連のより専門性の高い実務経験がある人 - 実務経験15年が必要な人
やや専門性の下がる業務の経験がある方は15年が必要
具体的には、住民税や固定資産税といった地方税に関する課税事務を経験した場合には、実務10年間で地方税科目を免除してもらえます。
一方で、徴収事務などを経験した場合には、地方税科目の免除を受けるには実務15年間が必要です。
3.全科目を免除してもらえるケース
最後に、税理士試験5科目すべてを免除してもらえるケースについてですが、
これは国税職員として23年間の経験がある場合が該当します。
「元税務署職員の税理士」として売り出している税理士の多くがこのルートで開業税理士となっていますね。
法律上は指定研修の受講が必要となっていますが、
実質的には無試験で税理士試験5科目すべての合格の扱いをしてもらえることになります。
公務員要件での免除はあくまでも特典
このように書くと身もふたもないかもしれませんが、
最初から将来的に税理士となることを目指して公務員になる…という人は普通いません。
(国税職員はそれ自体が社会的な意義もステータスもある仕事です)
あくまでも公務員としてやりたいことがあって国税専門官などになり、
老後の特典というか現役リタイア後のおまけのようなかたちで税理士資格をあげますよという雰囲気ですね。
これから税理士業界で働くことを目指す若い方は、
公務員としての科目免除を期待するよりも、
会計事務所で仕事をしながら地道に科目合格を積み重ねていくのが近道です。
あるいは、会計科目2科目と税法科目1科目に仕事をしながら合格して、
残りの税法2科目は大学院修了で免除してもらうというのが現実的なルートといえるでしょう。
P.S(このブログをしっかり読んでくれる人への追伸)
このブログの記事を読んでくださりありがとうございます。
税理士業界で働く人が、絶対に知っておくべきことを、
↓こちらの記事で書きましたのでご確認ください。
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↑どんなに忙しい方でも、
上の記事で説明したことだけは理解した上で税理士業界を目指してください。
さもないと、過去の私のようにブラック事務所にまちがえて入社してしまい、人生の貴重な時間をドブに捨てるようなことにもなりかねません。
(特に、20代〜30代前半で転職を検討している方は、キャリア構築上「一番大切な時期」にあたりますので、くれぐれも注意してください)
いま現在、すでに税理士事務所で働いている人も必ず知っておくべき内容ですので、ぜひ少しだけ時間をとって読んでみてくださいね。