- 会計事務所から監査法人に転職できる?
- 税理士補助の実務経験は監査法人でも評価してもらえる?
結論から先に言ってしまうと、会計事務所(税理士事務所)から監査法人への転職は可能です。
公認会計士資格がなくても、監査法人に採用されることは普通にありますよ。
この記事では、会計事務所から監査法人への転職を目指す場合の、転職活動のポイントを解説します。
税理士業界から会計士業界へのキャリアチェンジを検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
こちらの記事もおすすめ
この記事の目次
会計事務所と監査法人の働き方の違い
会計事務所から監査法人に転職する場合、仕事内容が大きく変わります。
↓このブログ記事を読んでくださっている方には説明するまでもないかもしれませんが、以下のような違いがあることは理解しておきましょう。
- 会計事務所(税理士事務所)
主な顧客は中小零細企業や個人事業主
基本的には顧客経営者の立場に立って仕事をする
月次監査〜年次決算・税務申告が基本業務 - 監査法人
主な顧客は上場大手企業
基本的に投資家(株主)の立場から経営者をチェックする仕事
会社法や金融商品取引法に従って、財務諸表や内部統制の監査をするのが基本業務
会計事務所と監査法人では、他にも働き方に以下のような違いがあります。
監査法人は現地集合・現地解散
監査法人は、現地集合現地解散です。
会計事務所は、基本的に事務所で勤務して外回りの際に顧問先へ訪問します。
しかし、監査法人ではクライアント先へ直行直帰が多いのです。
先輩含めて、数名で仕事をしますので個人行動はしないようにしましょう。
1円単位では仕事しない
会計事務所の監査業務は1円単位で監査をします。
しかし、監査法人では数百万~数千万円単位で監査を行います。
多少ザックリとしたところがあるんですよね。
会計事務所と監査法人の違いは意識してルールを守りながら、業務を行いましょう。
【会計事務所から監査法人へ転職】志望動機の書き方のポイント
会計事務所から監査法人への転職を目指す場合の志望動機では、
↓以下の5つのポイントを押さえて志望動機を作成しましょう。
- 会計事務所での経験が、監査法人でどのように生かせるかを伝える
- 応募先の監査法人の規模(業界内でのポジション)をよく理解しておく
- 応募先の監査法人ならではの特徴に共感したことを伝える
- 顧問先企業と日常的にどのように接してきたか・何を学んだか
- コミュニケーション力
1. 会計事務所での経験が、監査法人でどのように生かせるかを伝える
会計事務所(税理士)と監査法人とでは、仕事のフィールドは大きく異なります。
相手にするお客さんの規模がまったく違いますし、
メインとなる会計ルールも違います。
(税理士は中小企業相手に税法メインですが、
会計士は上場規模の企業を相手に
会社法や金融商品取引法などのルールをメインで使います)

ですが、会計事務所で積んだ経験は、監査法人で生かすことも可能です。
むしろ、会計事務所で働いた人は当然経験しているけれど、
監査法人ではなかなか経験しにくいことをあなた自身の強みにしましょう。
それは何なのか?ですが、
言い方は悪いですが「泥臭い会計・税務業務をコツコツとやってきていること」が会計事務所経験者の強みです。
会計事務所(税理士)のクライアントって、
街の商店街の八百屋さんや、町工場の製造業などがメインですよね。
こうした規模のクライアントとのやりとりでは、大手企業相手の仕事ではまず考えられないようなことがいろいろ起きます。
申告期限が目の前に迫っているのに、経理作業が1年分まるまる何もやっていないとか、
あるいはリアルに1ヶ月後に金がないと倒産するからなんとかしてほしい…とか、
あまりにも酷い内容の帳簿状態を、税務調査で重加算税をかされないためになんとか体裁をととのえるとか…。
↑こういう経験って、大手企業相手の仕事しかやってきていない人はまず経験できません。
こうした泥臭いことをたくさんやってきた「筋金入りの会計人」であることを、会計事務所経験者はぜひアピールしましょう。
監査法人と会計事務所(税理士)の仕事の違いなんて、
そんなにたいしたことではありません。
入社して3年もすれば仕事はなんとかできるようになるものですからね。
しかし、上のような「根っこの部分での経験値」は人それぞれで違いがあります。
会計事務所でキャリアをスタートし、
いろいろと苦労してきたことは、他の人にはないあなたの強みです。
こうしたことをぜひ監査法人での仕事に生かしてみてください。
(そして、それを志望動機というかたちで表現しましょう)
2. 応募先の監査法人の規模(業界内でのポジション)をよく理解しておく
監査法人とひとくちに言っても、規模や業種はさまざまです。
- 大手監査法人
- 中堅監査法人
- 小規模監査法人
↑という分け方がイメージしやすいと思いますが、
これより重要なのはメインにしているクライアントの業種ですね。
- 外資系の企業をクライアントとして多く持っている
- テック系の企業を多く持っている
- 金融サービス系の企業を多く持っている
- 財務コンサルに力を入れている
↑このようにその監査法人にしかない「強み」が必ずあるはずです。
この点は、中堅や小規模の監査法人に応募する場合には特に重要といえます。
なぜなら、中堅や小規模の監査法人が大手監査法人と業界内で共存できているのは、彼らが「大手にはない独自の強み」を持っているからです。
そうした情報をよく仕入れておくようにしましょう。
逆に、こうした情報をまったく知らずに応募してしまうと「本当にうちに入社したいの?すべりどめで受けてない?」といったように勘繰られてしまう可能性が高いです。
3. 応募先の監査法人ならではの特徴に共感したことを伝える
応募先の監査法人の規模やメイン業種を理解したら、今度は「その監査法人の中で働いている人たちはどんな人たちなのか?」に注目しましょう。
どんな企業(監査法人)も、人が動かしているものであることに違いはありません。
人間の組織ですから、さまざまな問題が生じてそれに対しての対策を講じながら仕事をしているはずです。
例えば、応募先の企業では残業や女性のキャリアアップにどのようなスタンスで望んでいるでしょうか。
男性の育児取得や、職員の試験勉強といったことについて、どのような支援制度を持っているかなど、その応募先が独自に行っているアクションについてリサーチしてみてください。
志望動機を考える際には、こうした「応募先の監査法人が独自にやっている活動に強い関心を持った」ということを伝えるようにしましょう。
「監査法人ならどこでもいい」というテンションで転職活動をしている人が多い中、その応募先独自の取り組みに注目しているあなたは、
他の応募者の中で頭ひとつ抜き出た候補者になれるはずです。
4. 顧問先企業と日常的にどのように接してきたか・何を学んだか
税務も会計も基本は、サービス業です。
会計事務所にて、クライアントに対する仕事の姿勢や取り組み方、相手とどのように接して評価を得てきたのかを話してみましょう。
また、通勤距離やワークライフバランスといったキーワードはNGですね。
監査法人は、出張や異動も多く、プロジェクトによって稼働時間も差があるためなんです。
5. コミュニケーション力
監査法人では、知識や業務正確性も必要ですが、社内外問わずにコミュニケーション力が最も必要とされます。
会話のキャッチボール、相手の深層心理を先読みする、的確な報連相など、意識していたことがあればPRしてみましょう。
>>【現在募集中】公認会計士なら応募できる求人の一覧(年収1200万〜1500万も可能)
会計事務所から監査法人に転職する場合の志望動機例文
上で解説したポイントをふまえて、会計事務所から監査法人に転職する場合の志望動機例文を紹介します。
アレンジして使ってみてください。
志望動機の例文1
近年、企業の不正会計(粉飾)発覚が相次いでおり、不適切な会計処理が企業内で横行していると感じます。
これは、貴社のポリシーである「公正な社会の実現」に反するものと存じます。
私が、これまで会計事務所で培った経験を活かし、貴社の理念およびクライアントの明朗会計実現に貢献したく志望致しました。
前職の会計事務所では、税務の他にIPO支援やIFRSの対応、内部統制、BPRなども経験させていただきました。
上記の経験も貴社のお役に立てると考えます。
志望動機の例文2
貴社は、優良クライアントも多く、早いタイミングで大企業の監査や国際業務も経験出来ると伺いました。
また、監査法人は企業の健全運営に必要不可欠と考えます。
会計面からより高度な支援ができると考え、志望しました。
>>【現在募集中】公認会計士なら応募できる求人の一覧(年収1200万〜1500万も可能)
会計事務所から監査法人へ転職できる?実際に求人検索してみた
↓実際に転職サイトで求人を探してみると、
会計事務所(税理士事務所や税理士法人)の実務経験者向けの監査法人の求人はたくさんありました。
なお、監査法人の求人はMSジャパンで探すとたくさん見つかりますよ。
>>MSジャパンで「会計事務所から監査法人」の求人を探してみる(無料サイト)
実際に転職エージェントさんに聞いたところによると、
会計事務所経験者のおよそ半数ぐらいは無事に内定を取るということでした。
(転職活動期間は早ければ1ヶ月〜2ヶ月程度)

そもそも会計事務所(税理士事務所)で働く人の中には、
もともと監査法人勤務の会計士を目指しているという人は多いですね。
会計事務所で経験を積んだ後、さらなるステップアップとして大手監査法人などへ転職していく人は少なくありません。
また、勤務先の会計事務所所長がもともと公認会計士出身だった場合、
会計事務所でも大手企業の会計監査業務を請け負っていることがあります。
もともとは税理士として独立希望だったけれど、
仕事を通じて会計士の仕事に興味を持って監査法人へキャリアチェンジというケースもありますね。
>>「会計事務所から監査法人」の求人を探してみる(無料サイト)
監査法人に転職するには会計士資格は必要?

監査法人に転職するために、
会計士資格やUSCPA資格は必須でしょうか?
大手監査法人(BIG4)の監査部門求人では必須です。
逆に、小規模〜中堅の監査法人では必須ではありません。
また、大手監査法人の場合は
どの職種に応募するのか?
によっても必要資格が違いますよ。

↓大手監査法人とは、一般的に「BIg4」と呼ばれる以下の4法人を指します。
- あずさ監査法人
- 監査法人トーマツ
- EY新日本監査法人
- PwCあらた監査法人
これら大手監査法人の監査部門採用では、
公認会計士有資格者(論文合格者)か、USCPA(米国公認会計士)の有資格者が対象となります。
純粋に会計士として大手監査法人で監査業務をやりたい人は、
公認会計士資格を取得してから就活を始めるのが良いでしょう。
>>「会計事務所から監査法人」の求人を探してみる(無料サイト)
ただし、大手監査法人でも公認会計士資格なしで採用されるケースはある
もっとも、大手監査法人でも募集職種によっては必ずしも会計士有資格者でなくても採用されるケースがあります。
具体的には、会計アドバイザリー業務などをメインとする職種で募集されているケースですね。
将来的には会計士として監査業務で働きたい人も、
こうした職種を狙えば大手監査法人に転職することができます。
こうした職種の場合、会計事務所での税理士補助としての実務経験も自己PRに使えますので、採用される可能性は非常に高くなるでしょう。
まずはこうした職種を狙って転職活動は完了してしまい、
働きながら公認会計士資格の合格を目指すのもありだと思います。
例えば、EY新日本有限責任監査法人では「トレーニー」という制度を導入しており、入社後に働きながら資格取得を目指せるようになっています。
実際に会計士の仕事内容を横で見ながら勉強できるのはモチベーションにつながります。
大手監査法人は税理士事務所よりも給与や福利厚生がはるかに良いのも魅力ですね。
>>「会計事務所から監査法人」の求人を探してみる(無料サイト)
小規模〜中堅監査法人の場合、公認会計士資格は必須でない
監査法人というと「大手監査法人で上場企業の会計監査をやる」というイメージが強いですが、
比較的小さな規模で活動している監査法人も多くあります。
(全国で約250ほどの監査法人があります)
BIG4の従業員数は3000人以上ですが、
準大手監査法人で数百名程度、小規模な監査法人なら従業員10名以内ということもありますね。
↓なお、準大手監査法人というのは、
以下の5社をいいます(公認会計士・監査審査会という組織が決めている基準による分類)
- 太陽有限責任監査法人
- 仰星監査法人
- 東陽監査法人
- 三優監査法人
- PwC京都監査法人
こうした小規模〜中堅監査法人への転職にあたっては、
監査部門の採用であっても、公認会計士資格は必須要件ではありません。
税理士資格や税理士科目合格でも
採用される可能性は普通にありますよ。

会計事務所から監査法人への転職を目指すなら、まずはこうした中堅規模の監査法人を狙ってみるのも一つの選択肢です。
中堅監査法人で働きながら会計資格を取得し、
さらに大手監査法人(BIG4)への転職を狙うというキャリアプランも現実的と言えます。
税理士から公認会計士へのキャリアチェンジ
いま会計事務所で働いている人が、
↓公認会計士への転職を目指すなら以下のようなキャリアプランが現実的です。
- まずは公認会計士試験の短答式に合格する
1年に2回チャンスがあります(5月と12月)
また、税理士試験の簿財と試験内容が共通していますから、働きながらでも短期合格を目指せます。 - 監査法人に転職する
会計事務所での実務経験と、短答式合格を武器にすればハードルは高くないはずです。 - 働きながら論文式合格を目指す
公認会計士試験は短答式よりも、論文式の方が難易度が低いです(もちろん簡単ではありませんが)
監査法人に転職するためには、
少なくとも公認会計士試験の短答式合格が必須になります。
(これは税理士事務所とはちょっと異なる点ですね)
公認会計士試験は
- 1次試験(短答:センター試験みたいなもの)と
- 2次試験(論文)に分かれているわけですが、
↓それぞれの直近試験の合格率は以下のようになっています。
- 1次試験(短答)
直近の合格率:20%前後- 2次試験(論文)
直近の合格率:40%前後- 短期合格者の平均勉強時間
2500時間〜3500時間
社会人として公認会計士試験合格を目指す場合、
2年〜3年程度の受験プランを立てておく必要がありますね。

もっとも、税理士試験の簿財科目合格レベルまで勉強が進んでいる人なら、
1年程度で短答式合格レベルになれるかもしれません。
短答式試験でもっとも比重が大きいのが財務会計ですが、
これは税理士試験の簿記論・財務諸表論と内容的な共通部分が多いです。
なお、働きながら試験合格を目指すなら、
受験勉強と両立しやすい環境で働くことも大切です。
職員の試験勉強を応援してくれる会計事務所への転職も選択肢に入れましょう。
短期合格者の勉強時間は2500時間〜3500時間(公認会計士試験)
短答式試験は1年に2回受験チャンスがあります(例年5月と12月)
↓受験科目は以下の4つです。
- 財務会計論
- 管理会計論
- 監査論
- 企業法
税理士試験の税法科目のような「理論丸暗記」がないので、
人によってはとっつきやすい内容かもしれません。
(管理会計なんかは勉強内容そのものとしてかなり面白いです)
すでに税理士試験の科目合格レベルの学力がある人なら、比較的短期間での合格は可能でしょう。
もちろん、公認会計士試験は日本最難関といわれる国家試験です。
合格までの道のりは簡単ではありません。

論文式試験は合格率が比較的高い(40%前後)ようですが、
この数字は分母が「短答式に合格した人たち」であることにも注意しておきましょう。
(優秀な人たちの中で、頭ひとつ抜け出す必要があります)